物価高や顧客の高齢化、残暑の長期化で、中小衣料専門店の秋冬商戦は転換期を迎えている。大手と価格や品揃えで競うのではなく、小ロットの機動的な仕入れと顧客に寄り添うコーディネート提案で、独自の価値を打ち出すことが重要になる。

大手小売り2社は年間売上げ伸ばす

 消費者は物価高で生活防衛意識が強まり、衣料品選びは慎重さを増している。安くても必要性を感じない商品は買わず、着用期間の長さや機能性、着回しやすさなど、価格に見合う価値を見極める傾向が強い。

 その中で、国内ユニクロは2026年8月期第3四半期の3カ月間で、売上収益が前年同期比10・0%増、既存店売上高が9・9増となった。トレンドを取り入れたボトムや気温対応の機能商品が伸びた。26年秋冬は定番商品の種類を広げ、ミラノリブカーディガンやフランネルシャツを投入。8月下旬からリバーシブルダウンなどを本格展開する。カシミヤ混ヒートテックはトップに加え、タイツやレギンスも揃える。残暑から冬まで長く販売できる商品を充実させる。

 しまむらの26年2月期連結売上高は7000億円となり、売上高と各利益が過去最高を更新した。自社ブランドやインフルエンサー、キャラクターとの企画商品を比較的少量ずつ投入し、売り場の変化を来店動機につなげている。26年秋冬も共同企画を強化。秋冬仕様に更新した美脚フレアパンツを販売するほか、キッズでは「アンブロ」のマルチカラー・ボアジャケットを投入。トレンドと実用性を備えた限定商品を小刻みに発売し、低価格に加えて商品を探す楽しさを打ち出す。

冬物ニット、アウターの先行受注好調

 横山町の卸商社は、物価高や円安による商品価格の上昇、固定客の高齢化を共通の課題に挙げる。消費者は生活防衛意識を強め、安くても不要な服は買わず、着心地や実用性、価格に見合う新鮮さを「慎重に見極めている」というのが共通認識だ。特に年金生活者の買い控えが目立ち、専門店には40〜50代を含む「新しい顧客層の開拓が求められる」としている。

 秋物は残暑の長期化で販売期間が短くなるとみて、夏素材に茶やカーキなどの秋色を取り入れた商品、薄手の羽織り、ベスト、カーディガン、デニムなどを重視。投入量を抑え、小ロットで新作を継続的に供給する。初冬まで長く着られる肉厚素材や軽量アウターも揃え、気温と店頭の動きに合わせた仕入れを支援する。

 丸太屋と宮入は共に7月に秋冬物の新作展示会で先行受注を始めた。2社とも「冬物を早く確保しておきたいという専門店意識があった」と口を揃える。秋物の実需期が予想しにくいこともあり、気温変化に合わせてタイムリーに店頭に投入したいという考えからだ。丸太屋は冬物アウターに注目が集まり、「ダウンジャケットは想像以上に反響があった」という。宮入は昨年に引き続き「蔵出し市」を実施した。カシミヤやアンゴラなどの高級獣毛素材のセーターやカーディガンをリーズナブルな価格で提供。「昨年以上の反応」と手応えを得ている。

 アクロスは7月半ばにすでに晩夏物を投入し、8月からは初秋物を品揃えしていく。カットソーを中心に、得意のアンサンブルなどを幅広く品揃えしていく予定だ。

 トーヨーは40〜50代のミセス層へ顧客を広げるデザインの商品を厚くする。残暑の時期にも夏物を在庫して提供するほか、店頭の動きを見ながら秋物に切り替える。重点商品はベストやカーディガンで、ハート形のボタンやきらきらした装飾など、「目新しさや可愛らしさを感じられるデザイン」を提案する。

 都繊維ファッションシティは数量を抑えながら、イタリアとフランスの新作を小ロットで毎週投入する。専門店の売り場で不足する商品を予測して仕入れに反映し、トップス、パンツ、ジャケット、コートまでを合わせたトータルコーディネートを基本に提案する。

 丸田産業東京支店は、前ファスナーパンツやドット柄パンツ、尾州産地の生地を使ったワイドパンツが重点商品。「売り場に新鮮さを加えられる新商品を積極的に提案する」という。

提案力で秋冬商戦に活路

 残暑の長期化を受け、中小衣料専門店には従来型の秋冬商戦からの転換が求められる。秋物を一度に揃えるのではなく、夏素材に秋色を取り入れた商品や薄手の羽織り、デニムなどを小ロットで投入。気温と販売動向を見ながら商品を追加し、初冬まで着られるベスト、カーディガン、軽量アウターへつなぐことが重要になる。40〜50代や働く60代に向けて、色、柄、シルエットを見直す必要もある。ユニクロの機能性や定番、しまむらの低価格と豊富な品揃えに、価格や商品量で対抗するのは難しい。顧客の体形、好み、手持ちの服を把握し、トップスからパンツ、アウターまで着方を含めて提案することが差別化になる。新作やコーディネートを個別に知らせ、取り置きや来店予約につなげる。売る商品を増やすより、一人ひとりに「この店で買う理由」を作ることが秋冬商戦の鍵を握る。