横山町ではインターネットに力を入れる問屋が増えてきました。インターネットでの情報収集が当たり前の時代に自店の情報発信と卸機能を組み合わせて、より仕入れに来街する専門店の利便性を高めようという取り組みです。写真でわかりやすく掲載して商品を提案したり、新商品情報もいち早く発信します。会員登録した専門店はどこよりも早く情報を手に入れて、自店にいながらにして仕入れることができます。スマホからの発注も可能です。決済はyhカードや銀行振り込みですが、日本全国からアクセスできることで、街を訪れなくても横山町の商品を仕入れることができます。新型コロナウイルスの影響で外出しにくい状況ですが、インターネットを使えば、より効率的な仕入れができます。一度、チャレンジしてみるのもいいのではないでしょうか。

人手と手間をかけず、店頭にプラス・オンの商品

アクロス(横山町6-15  ☎03・3639・0838)

新商品をすぐにアップ

 アクロスは卸のネットモール「スーパーデリバリー」(ラクーン)に出店している。以前は専門スタッフを採用し、事業部として力を入れていたが、「ビジネスとしてあまりメリットはなかった」(坂井啓祐社長)。「資本をかけず、少ない人員で運営できる」と、昨年から同モールの卸に絞った。

 商品は週に4回程度、新商品が入荷するたびにアップする。同店を訪れることのできない専門店にとっては常に同店の新商品をチェックし、他店に先駆けて仕入れることができる。会員登録が必要だが、店頭に新しい商品をクイックに投入できるメリットは大きい。

「店頭+α」を着実に

 同社の顧客は北海道から沖縄まで全国にあるが、ネットで仕入れるのはほぼ新規客、既存の取引先は横山町の実店舗で仕入れるケースが多い。ネットで仕入れることは少なく、「地方の専門店はもっと活用してもいい」と言う。

 現在の登録は約350社で、実店舗で仕入れたことのない新規専門店が多い。リピートは約1割で「売上げの大半はその1割が占める」。顔が見えない商売で、時にはクレームが寄せられることもあるが、ネット卸は「あくまでも店頭の+α」と割り切る。「やはりネットが入り口になる。そういう時代になった」。ネットでの発信は避けて通れないと考えている。

https://www.superdelivery.com/p/do/dpsl/1000173/

ご来店したお客様にも好評。事前に仕入れ商品チェック

丹波屋(横山町7-17  ☎03・3661・2111)

写真で商品を細かく紹介

 同社サイトの最大の特徴は、一つひとつの商品を細かく紹介することだ。一つの商品を7〜8点の写真で紹介する。バッグでは前と後ろ、持ち手や内部のポケットなど細かく写真で見せる。機能まで含めてビジュアルに見せることで商品の訴求力を高めている。写真の掲載方法を変えたことで「ネット卸でのクレームが減った」。

 一方で、「写真だけではなく、今後はフリーページも作りたい」という。商品を使用している場面であったり、その商品の背景や仕入れ担当者の思いなども伝えていく。

 これはクリスマスや母の日などの月ごとのテーマで発信する時には重要で、取引先が「セールストークとして使えるフレーズなども掲載していくほか、店頭のディスプレーなども紹介していきたい」としている。

計画的な仕入れに寄与

 同社は2年前にネット卸を導入。サイトは外部の力を借りて作成した。会員登録は店舗に来店し、会員番号を持っている専門店に限定している。当初は戸惑う専門店もあったそうだが、現在では商品をバーコードで管理し、受注履歴が残ることで、電話やファクスよりも「お客様のご注文履歴がわかりやすくなった」。一方で専門店からは「計画的な仕入れができるようになった」と好評だ。

https://www.tanbaya-oshiire.net/

移動時間にスマホで商品をチェック

上田嘉一朗商店(横山町8-9  ☎03・3663・2511)

会員登録が一気に増加

 新型コロナウィルスの影響だろうか、「特にこの1月、2月は会員登録が一気に増えた」という。来店客数が減少している中でネット卸は有効なインフラで、これまでほとんどなかった大阪や九州などの専門店と取引ができるようになった。既存の取引先からは「来店しなくても仕入れやお取り置きができる」と好評だ。

 ネット卸は昨年8月に全面リニューアルし、新たにスタートした。特に力を入れたのが、トップページのバナー。インパクトのある画像に差し替えた。また、「スマホで下にスクロールすればすぐに商品が見られるように」と、バナーの下に商品写真を配置した。現在ではスマホで商品をチェックし、パソコンから発注するケースが増えている。

仕入れを刺激

 ネットでの発信は「専門店の仕入れマインドを刺激することもできる」という。特に母の日や父の日などの季節商品は早めにアップする。

 一方で、仕入れ担当との打ち合わせも重要だ。仕入れた商品に対する担当の思いを伝える。また、売り場として販売を強化したい商品は積極的に発信していく。現在は、ネット専業のショップも多く、掲載写真なども提供する。また、今後は「お取引先様のネットショップ支援」にも力を入れる。

https://uedakaichirou.ocnk.net/

雑貨を手軽に仕入れる。製造体制で別注も可能

細谷商店(横山町8-7  ☎03・3663・5791)

ネットショップに拡大

 ファッション雑貨の細谷商店はネット卸を始めて8年、「おちゃのこネット」に出店して本格的に取り組んで5年になる。「最近になって新規開拓の入り口として機能し始めた」と、これまで取引のなかった専門店との取引が次第に増えてきた。

 特に「ネットショップの仕入れが増えている」という。ネットショップは常に新しい、サイトでインパクトのある商品を探す。ファッション衣料を扱うネットショップにとってベルトや手袋などのアクセサリーはコーディネートに欠かせないアイテムで、常に仕入れ先を探している。現在、約1800アイテムを掲載しているが、当面は「扱う全商品をアップすること」を目指す。

別注対応も

 「取引のなかった専門店の声が聞けること」が大きい。専門店の商品に対する要望がダイレクトに届く。長年、店頭販売に合わせた品揃えでは見えなかった「お客様の望むデザインやカラーが見えるようになった」。それらを店頭にフィードバックしていくことで、店頭でも幅広い提案ができるようになった。

 また、店頭にない商品でも「弊社の製造体制でできる商品を別注すれば他店との差別化に繋がる」と話す。ファッション雑貨は売り場には欠かせない。別注も時には必要だ。

https://hosoya.ocnk.net/

モデル着用写真掲載でブランドの世界観を表現

カドー東京店(東日本橋3-10-1   ☎03・5623・2275)

常にお客様目線で

 「スーパーデリバリー」に出店し、オリジナルブランドの「リョウコキクチ」「カドリーナ」のブランドに特化して卸す。インスタやLINEなどでも発信している。

 「リョウコキクチ」などのブランドで「いかにブランドの世界観を伝えていくか」。単品の商品写真だけではなく、モデル着用の写真などを掲載することで、着こなしやコーディネートなどが一目でわかる工夫をしている。だから写真に添える文章は「いつも仕入れる専門店様とその先にいる消費者の目線を忘れない」ように注意している。更新は月に1回程度だが、写真撮影は常に試行錯誤しながらやっている。

コミュニケーションを大事に

 直接、顔を合わせない商売ということもあり、ネット上でのやりとりだけではなく、商品の発送時には、「必ずお礼の手紙を同封するようにしている」。また、「こちらの都合で在庫が確保できないときには、直接電話で伝える」。このようなやりとりの中で、お礼のメールや手紙をいただくこともあり、そのときにはスタッフみんなで喜んでいる。ただ、在庫管理が非常に難しい。在庫切れで注文が入ることもあり、それが今の大きな課題だ。現在は全社売り上げの1%未満だが、今後は直接消費者にアプローチすることも視野に「付加価値のある、差別化できる商品を販売していきたい」という。

https://www.superdelivery.com/p/do/dpsl/205693/

LINEのみで受注。個別の情報発信で効果

東洋衣料(横山町6-12    ☎03・3661・4859)

毎日、10〜20商品を配信

 子供服の東洋衣料はLINEを使って卸す。LINEであれば個別に配信し、受け取った専門店が見てくれる確率は他のウエブサイトよりもグッと高くなる。毎日、10〜20点をLINEで配信する。

 「本格的に卸サイトを開設したり、卸専門のモールに出店したりすることは難しかった」(岡田雄志社長)という。ネット卸に専念できるスタッフを配置できない状況では、手軽に、すぐにできるツールとしてLINEを選んだ。自らが毎日、10〜20点をスマホで撮影して配信。新商品が入荷した時はもちろんだ。専門店にとっては自らアクセスしなくても同社の情報がスマホに送られてくる。毎日、店頭で売れそうな商品をチェックすることができるというわけだ。ただ、スポット買いが多く、「今後はコーディネートなども発信していく」という。

奉仕会加盟各社と協力して

 「LINEをやっていなかったらと思うとゾッとする」と岡田社長。現在では卸全体の「2〜3割を占めるようになった」。売り上げの柱に育ちつつある。

 また、台湾などの専門店とも取引が始まった。子供服は少子化で国内市場のシュリンクが見えている。その中で越境ECなど海外へと販路を広げていくことも重要だと考えている。「横山町奉仕会の各社と協力することで海外に向けた発信、受注サイトを構築すれば、顧客の幅はもっと広げていける」と話す。

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