〜秋冬商戦はカジュアル化とスピード感〜

 ここにきて再び新型コロナ感染が拡大している。政府の緊急事態宣言解除以降、休業した店舗が再開し、消費者の購買意欲が戻りつつあっただけにこれからの動向に不安を覚える。「新型コロナとの共生」といわれる中で、「新常態」「新常識」(=ニューノーマル)のライフスタイルが提唱されている。春夏商戦が事実上消滅したが、いかに冬物商戦で取り戻すか。「新常態」「新常識」にポイントがありそうだ。

変わる日常の行動パターン

 緊急事態宣言後、多くの商業施設が営業を再開する中で都心店舗よりも地元店舗のほうが売り上げの戻るスピードが速かった。百貨店にも多くの売り場を持つ寝具の西川(東京)は「新宿よりも立川や浦和の売り上げが好調」という。また、「新型コロナの影響はそれほど大きくはなかった」とする郊外店舗もある。都心店舗までの移動は感染リスクが高くなる。居住地域に近い売り場で買い物をするという心理は理解できる。

 一方、企業も働く人もテレワークの合理性に気がついた。緊急事態宣言期間中、通勤電車はガラガラ。満員電車に苦労することもなく、在宅でも十分に仕事がこなせることがわかった。テレワークは現在減少したとはいえ、出社する日数は確実に減少している。

 新型コロナは私たちの「晴れの日」を奪ってしまった。入学式や卒業式、祭りは中止され、感染拡大の大きな要因とされる会食やパーティーはほとんど開かれない。これからのハロウィンやクリスマスパーティーも制限されてしまうだろう。

 7月23日からの4連休は「GO TOトラベル」キャンペーンが前倒しで実施されて行楽地にも多くの人が訪れたが、旅行は海外に渡航できない状況が続く。国内旅行も車で2〜3時間程度の近場が主流になる。新型コロナは私たちのライフスタイルを大きく変えた。どう変化していくのか、そこを見極めることが重要なポイントだ。

地域客掘り起こしのチャンス

 これから迎える秋冬商戦にどのように取り組むか。ポイントは消費者の変化に合わせた品揃えとスピード感だ。

 一つの傾向はカジュアル化。これまでのレディス衣料は「お出かけ服」の需要に支えられてきた。しかし、外出機会が減り、パーティーなどのイベントが開かれない。旅行は近場で、通勤の回数も減る。当然のことながら「エレガンス系、スーツやジャケットなどの動きは鈍くなる」とする見方が多い。「部屋の中でも着られるカジュアル系の回転を速くする」(都繊維)や「部屋着を含めて秋物はカジュアルなラインが中心」(アクロス)、「スポーツバンツなどテレワークや巣ごもりの需要は続く」(丸田産業東京支店)など、カジュアルなカットソーやチュニック、ベスト、パンツなどを提案していく。

 一方で、各社とも商品の回転を重視する。「期中企画も含めて早いスピードで商品を入れ替えていく」(カドー東京店)と、売り切って新鮮な商品を仕入れる戦略だ。在庫を残さないということもあるが、メーカーは秋冬物の生産量を絞り、店頭での欠品も懸念されている状況だ。これまでのように売れ筋を容易に追加することが難しくなる。これまでの売れ筋に頼る仕入れではなく、先手を打った仕入れが大事だ。新型コロナは消費者の目を地元の売り場に向けさせた。タイムリーで、地元顧客にピンポイントに響く商品を仕入れることができれば、専門店にとってはそれが大きなチャンスになる。

来街困難専門店をサポート

 この間、問屋各社で進んだのが仕入れに来ることのできない地方専門店に向けてのサポート体制だ。「卸サイトを充実させてきた」(上田嘉一朗商店)や「ZOOMを使って商品を見ながら商談できる仕組みを整えた」など、これまでの電話やファクスに加えて、SNSやインターネットでの仕入れを強化している。ZOOMはインターネット会議システムで、スマホを使って手軽に、相手の顔を見ながら商品の説明や商談ができる。

 東北や北関東、上信越には「東京に行くのが怖い」という専門店が多い。最近の第2波ともいわれる状況でますますその傾向は強くなるだろう。専門店にとっていかに店頭に新鮮な商品を仕入れるか。東京を訪れなくても仕入れできる方法はある。卸各社との連携を深めてネットワークシステムを積極的に利用することができれば、商売は一層、活性化するにちがない