新型コロナが5類に移行して初めての新年を迎えた。今年は故郷に帰省する人も多く、コロナ前の日常が戻ってきたようにも感じる。物価高や給与所得の伸び悩みなど私たちの生活に豊かさは感じられないものの、アパレル小売市場はコロナ禍が直撃した2020年を底にわずかながら上昇している。今年の干支「甲辰」は「急速な成長と変化が起きること」を暗示しているという。コロナ禍で変化した商圏のニーズをつかみ、顧客の消費マインドを喚起していきたいものだ。

 

 日銀が昨年12月に発表した2023年11月の企業物価指数(速報)は前月比で0・2%、前年同月比で0・3%の上昇だった。メーカーや卸、小売りの間で取引される価格の上昇度を示すもので、22年11月の前年比10%の上昇からは落ち着いた状況にある。一方、消費者物価指数(総務省、23年度10月分)の総合指数は20年を100として107・1%、前年同月比でも3・3%上昇している。今後の見通しとして日銀は「消費者物価の前年比は来年度にかけて2%を上回る水準で推移するとみられる」としている。

 この間の物価高や電気代などの上昇は消費に大きく影響した。家計調査(総務省、23年度10月分)の二人以上世帯の消費支出は1世帯当たり  30万1974円で、実質で前年同月比2・5%の減少。勤労者世帯の実収入は1世帯当たり 55万9898 円。実質で前年同月比5・2%の減少だった。物価上昇に収入が追いつかず、消費者の買い控えが進んでいる。政府が呼びかけている賃金上昇が中小企業まで広がり、政府の物価対策によって消費が高まってくることに期待するばかりだ。

冬物衣料は好調?!

 矢野経済研究所が昨年10月に発表した「国内アパレル市場に関する調査」によると、22年の国内アパレルの小売市場規模は8兆591億円で、前年比105・9%。「2年連続で前年を上回り、回復基調」にあり、コロナ禍が明けて外出機会が増え、特に都市部の人流が増加し、「実店舗の利用が増えた」としている。しかし、19年の9兆1732億円には届いておらず、「25年頃までにはコロナ前の水準まで回復する」とみている。繊研新聞によれば、11月のファッション小売り商況は気温の低下で、「苦戦していた防寒ものが中旬以降、一気に浮上した」という。百貨店や大手チェーンの中にはコロナ前の水準を上回った売り場もあった。

 しかし、問屋各社の声を聞くと、横山町問屋街を訪れる小売店はそれほどの実感はないようだ。一部大手と都市部を除けば、物価高と不安定な気温によって冬物のスタートが遅れ、実需期での販売期間が短くなってしまった。気温が下がる1月にラストスパートをかけたいところだ。

先んじて春物を

 横山町問屋街では年初から春物が店頭に並ぶ。他店に先駆けて、春物を視野に販売の戦略を組み立てたい。

 宮入は1月4〜31日、「2024婦人アウター春物展示予約会」を予定している。春物商品を年初から小売店に見せることで実需期の仕入れをサポートする。 アクロスは年初から春物を売り場に投入する。梅春から晩春にかけての商品を速いサイクルで入れ替えていく計画だ。

 丸太屋は1月9〜16日と2月13〜20日の2回、24年婦人春物ボトムの「春物新作展示発表会」を開き、春物提案を強める。

 衣料は気温に左右される。いち早く商圏のニーズをつかみ、タイムリーな品揃えをしたい。横山町奉仕会加盟各社は今年も全力で来街小売店を支援する。