気象庁は5月16日、「九州南部が梅雨入りしたと見られる」と発表した。昨年よりも23日早く、平年と比較しても14日早い。地球温暖化の影響で、年々「夏が長くなった」と感じている人も多いだろう。今年も夏物の実需期が長くなることが考えられる。気温の変化に合わせてきめ細かい商品提案が求められる。
5月には各地で夏日を記録
日本気象協会の「3カ月予報」によれば、6〜7月は全国的に「平年よりも気温が高く、特に6月は高い確率が60%以上」と予想されている。5月にはすでに真夏日を記録した地域もあり、熱中症への警戒が喚起された。地球温暖化の影響か、真夏の訪れが年々早くなっている。5月は寒暖差が大きい状況が続いたが、6月に入ると気温が上昇し、30℃を超える日が増えてくる。7月に入ると梅雨空の日が増え、気温は平年よりも高い。「体にこたえる蒸し暑さの日が増えてくる」としている。
令和5年と6年の夏は2年連続で観測史上1位の猛暑となった。日本気象協会は、今年は過去2年には及ばないものの、「気温は平年よりも高く、猛暑となる」としている。昨年との違いは梅雨入り、梅雨明けが早く、夏の前半から台風の発生が「多い見込み」ともいう。 これらは太平洋熱帯地域の海面水温が変化するラニーニャ現象の影響を受ける。現在はラニーニャ現象の発生は確認されていないが、「ラニーニャ寄り」として猛暑、また、秋にかけても「厳しい残暑」と予想している。
夏の長期化に対応する企業も
夏が長く、秋が短いというのはここ数年で実感していることだろう。大手ファッションアパレルでは、こうした夏の長期化に対応して秋物を1カ月後ろ倒しする企業も出てきた。通常秋物の販売は7〜9月のタイミングでピークにもっていったが、残暑も含めて気温が高い状況が続くことで、秋物のスタートを8月に移行するという戦略だ。また、1年を四季ではなく「五季」としてMDを組む企業もある。
夏物をいつまで引っ張るかは各店によって異なるが、気温の変化を敏感に捉えて、店頭商品を切り替えていくことが必要だろう。接触冷感やUV(紫外線)カット加工、ウォッシャブルなどの夏物機能性素材は比較的暑い秋にも対応できる商品だ。
この夏も長期化が予想される夏商戦が本番を迎える。消費者のニーズはどこにあるのかを見極め、秋物戦略も視野に入れながら夏物の実売期を逃さない商品を揃えていきたい。
購入金額増、来店頻度減
総務省が発表した令和7年度3月の消費者物価指数は、総合指数で前年同月比3・6%の上昇、生鮮食料品およびエネルギーを除く総合指数は同2・9%の上昇だった。
特に生活に影響が大きな食品の物価上昇が大きい。食料全体の上昇率は前年同月比7・4%、米の価格は政府の備蓄米の放出があったとはいえ、価格が下がる兆しを見せない。一方で24年の実質賃金は3年連続の前年比マイナス。生活を圧迫する物価高によって他の商品の購買を控える傾向が強い。
その中にあって「女性用洋服」の購入金額は前年同期と比較してわずかだか上昇している。家計調査によれば、令和7年1〜3月における購入金額は総世帯で5783円、勤労者世帯で7713円。令和6年1〜3月の総世帯で5747円、勤労者世帯では6709円と前年よりも購入金額は増えた。
気になるのは購入頻度だ。令和6年1〜3月に総世帯は1世帯あたり0・87回、勤労者世帯は1・04回だったものが、今年の1〜3月は0・82回と1・03回に減少している。
購入金額の増加は物価上昇分も含まれるが、支出金額自体は下がっていない。しかし、購入頻度の減少は衣料の買い控えといった側面もある。夏物商材は比較的単価の取れない商品も多い。いかに店舗に足を運んでもらうか。顧客への来店の促進でいかに購入頻度を高めていくかがポイントだ。