物価高続き、ますます厳しくなる生活実感

 今年の春闘は大企業が大盤振る舞いといった様相で、労働組合に対して軒並み満額回答した。定期昇給とベースアップを合わせて5%を超える賃金の上昇がみられた。しかし、これは株式上場している一部の大企業に限られたことだ。全体の多くを占める中小、零細企業にとって賃上げは経営に大きく影響してくる。現実に賃上げはこれからの難しい課題になってくるだろう。

 厚生労働省が5月9日に発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価の変動を考慮した一人当たりの実質賃金は前月比2・5%減で、24カ月連続の減少で、過去最長を記録した。一部のアナリストからは実質賃金が増加するのは「早くても年末」という声も出始めている。2020年の実質賃金を100としたとき、3月は87・2%に過ぎない。全産業の現金給与総額は30万1193円で、前年同月比0・6%増だったが、2月と比較して伸び幅は鈍化した。物価の上昇に賃金が追いついていかず、家計は苦しくなるばかりだ。

 一方、3月の消費者物価指数(総務省)は、2020年を100としたときの総合指数は107・2で、前年同月比は2・7%の上昇。生鮮食料品とエネルギーを除く総合指数は106・8。前年同月比で2・9%の上昇だった。被服及び履物は総合指数で107・0、前年同月比では2・2%の上昇だった。衣料関連は長く続く円安の影響も大きく、中国や韓国からの商品単価が上がっている。

 その一方で、私たち国民の負担率は上がっている。介護保険の負担金額が上昇して過去最高となるなど、年金受給者である高齢者にとっては厳しい。実質賃金が伸びない中で、国民一人ひとりの負担は増えている。消費マインドがなかなか盛り上がってこないのは当然だ。

 生活必需品ではない衣料品の購買をためらう人も多いだろう。円安が影響した物価高の抑制、国民の負担軽減、消費促進の現実味のある経済対策の必要性が高まっている。政府の政策に期待したい。