総務省から今年6月の家計調査報告が発表された。新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言で4月、5月は売り場の営業を自粛。消費は大きく落ち込んだ。緊急事態宣言が解除され、感染拡大も一段落と感じさせたこの6月には少しずつ回復の動きを見せた。「第2波」といわれる中でいかに秋冬商戦に取り組むか。早急な商品の導入が必要だ。

6月は上昇気流

 発表された家計調査によると、コロナ禍の中で消費支出の対象は明暗が分かれた。食料品、家具や家事用品、パソコンやゲームソフトが伸びた一方で、食事代や飲酒代、被服及び履物、宿泊や旅行、映画入場料などが大きく落ち込んだ。「巣ごもり消費」が明確だった。

 この6月の消費支出は5月から大幅に改善した。2人以上世帯の消費支出は27万3699円。対前年同月比で1・2%の減少だったが、直近の5月からは13・0%の増加となった。一方、2人以上の勤労者世帯の収入は1世帯当たり101万9095円。前年同月比15・7%増だった。これは特別定額給付金の支給が大きな要因で、全体の消費が下降線をたどっている中で可処分所得も増えた。2015年=100とした指数で「家具や家事用品」は2月以降順調に伸びて6月の指数が142・5、前月比23・4%増と大幅に伸びた。家庭で過ごす時間が増え、より快適な生活を求めて家具を購入したり、リフォームしたりと動いた。

【6月の消費行動に大きな影響が見られた主な品目】(%)

被服消費に伸び

 被服及び履物の消費は今年2月から急落し、この4月には月間の支出金額は5199円。指数で40まで落ち込んだ。1月の1万2184円から3カ月連続の減少だったが、5月には7780円、6月は1万2184円と伸びてきた。5月と比較して指数では4月から226%、5月からは60・7%増となった。報告書によると、前月に比べて支出額が増加した主な項目として「洋服、シャツ・セーター類」を挙げている。

 緊急事態宣言の解除以降、百貨店や商業施設の再開もあり、買い物に気持ちが向かったこともあるだろう。インターネットなど、購買チャネルが広がったことも後押しした。

 また、大都市圏を除いて地方の店舗では比較的売り上げが順調だったという声も多い。特別定額給付金の使い道の一つとして衣料を選ぶこともあっただろう。ファッションはコロナでも大打撃を受けたが、少しでも回復してきたことは明るい話題だ。

被服及び履物の推移

売れ筋追加は困難

 こうした消費者の消費動向に向けてこの秋冬商戦にどう取り組むか。まだまだ暑い日が続くが、夏物を引きずり過ぎないことが大事だ。「秋物を早く取り入れている専門店が比較的好調」(カドー)といった声が聞かれる。需要に向けた秋冬物をいち早く店頭に並べたい。

 メーカー各社が秋冬物の生産を大幅に抑え、横山町の各問屋からは「なかなか商品が揃わない」や「納期遅れが発生している」、「新しいものを作らない」など不満の声もある。

 問屋は一方、仕入れを絞り込み、早いサイクルで売り切る方針を固めているところも多い。専門店にとって仕入れるべき時にピンポイントで商品を手当てしなければ本番に入って新鮮な商品を店頭に並べることができなくなる。今こそ、現物買いができる問屋街の力を利用することだ。

 新型コロナの収束が見えてこない中で商品に対しては「巣ごもり消費」の志向がまだまだ続くと考えていいだろう。「家の中でも、ちょっとした買い物にも着て行けるカジュアルなライン」(宮入)など、初秋向けは各社ともカジュアルな商品を厚く提案する。

 消費者のファッションに対するマインドは少しずつ戻ってきている。そのマインドに響く商品、オケージョンに合った商品は売れる。暑さは続くが、秋に向けてアクセルを踏み込んでいきたいものだ。