3月17、18日に問屋街活性化委員会は、岡田浩一明治大学経営学部教授の指導のもと、金沢市と能美市にて研修を行いました。委員会からは10名が参加。当日はIT経営の実践に優れた板金部材メーカーの株式会社光栄(能美市)、金沢市商工会議所(金沢市)、地域活性化や街づくりに長年取り組んでいる九谷焼製造卸販売の九谷百万石(能美市)を訪問しました。

しっかり作ることに専念する

 最初に株式会社光栄を訪れ、坂本典昌社長からお話を伺いました。

 同社は板金加工で30名ほどの中小メーカーで、コマツなど大企業の下請け業務をメインに行っており、過去には「攻めのIT経営中小企業百選」や「日本品質奨励賞」、「TQM奨励賞」など数々の賞を受賞されています。坂本社長は繊維商社の営業職を経て入社しました。当時は債務超過で、京セラ創業者稲盛和夫氏の本に感銘を受け、氏主催の「盛和塾」に入塾したそうです。

  

 全員参加での経営をモットーに社内での委員会活動、小集団活動などで改善活動のPD CA(プラン・ドゥー・チェック・アクション)を回しながら、社長自身が生産管理や会計労務のシステムを内製化。中小製造業では大変珍しい日次決算まで実施されています。商業と異なり、工業は個別原価計算では間接費まで製品に組み込む配賦(部門や製品を横断して発生する費用を、配賦基準に従って配分処理すること)等の面倒な手続きを行う必要があります。そのようなシステムを「桐」という安価なデータベースソフトを用いて、独学で試行錯誤しながら作り上げたそうです。元システムエンジニアの私としては驚愕の一言です。工場内も整理整頓され、社員の方々の挨拶も気持ちよく、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底が図られておりました。現在はご子息も入社され、さらなる改善活動に取り組まれております。自社ではあまり営業をされていないそうで、本業の製品を「しっかり作ることに専念する」という言葉が印象的でした。

 次に金沢商工会議所を訪問しました。

 金沢市は戦争中の空襲被害がほとんどなく、古い街が残っている城下町です。観光資源も豊富で、訪問したときはまさに卒業旅行シーズン。市内はものすごい数の観光客でした。

 金沢は開発は市が主導で行っています。新幹線効果で訪問客は伸びており地方都市では大成功の街かと思います。ただし郊外は大型ショッピングセンターができ商店は苦戦とのことで、大店法のため行政が何もできないという歯がゆさを感じました。「日帰りで遊びに来られますから」という言葉が印象的でした。

職人の養成や新商品開発にチャレンジ

 翌日は九谷焼窯元、九谷百万石の吉田正一社長から話を伺いました。

 九谷焼で窯元というのはいわゆる商社です。九谷では絵付職人、焼成、商社から仕入れた商人の分業体制での販売を古くから行っています。昔は現物を地方に持っていっての行商でしたが(遠くに行くほど九谷焼が高くなる)、昭和40年代からカタログ事業組合を作り、カタログ中心の販売に移行していきました。有名作家物から安価な転写物まで幅広く取り扱っており、古くは明治から海外展開を行っている産地です。

 業界の課題や問題としては、流通の整備が進んで得意先の在庫が減る、掛け率を乱す業者、個人販売やネット販売で既存客の百貨店などからの反発、職人や後継者不足などが挙げられるそうです。数々の問題を何とか解決されようと職人の養成や新商品へのチャレンジなど頑張っておられました。「思いが強くてまとまらない」という言葉が印象的でした。

 

熱意を分けていただいた

 普段、狭い街の中で限られたメンバーだけで、様々な課題に取り組んでいると見えてこないものがあります。別の産地や業界からお話を伺うと、自分の視野の狭さに気付かされます。現場に伺い、生の声を聞き、そして熱意を分けていただきました。大変刺激になりました。ご協力していただいた皆様、本当にありがとうございました。(村上信夫・問屋街活性化委員会ソフト委員会委員長、丸三繊商社長)