大都市圏はコロナ感染が拡大し、緊急事態宣言とまん延防止重点措置の状況にある。一方で、ワクチン接種が進んでいる。これらが解除されれば、高齢者や中高年は確実に動き出す。特に9〜11月にはこれまで以上にワクチン接種効果が進む。横山町の問屋と仕入れに訪れる専門店はこれまで厳しい状況に追い詰められていた。この秋冬商戦こそ衣料品の回復に期待だ。

まもなく高齢者の接種が終了

 新型コロナの感染拡大は第5波という状況だ。1日の新規感染者数が全国で5000人を超え、感染力が強いとされるデルタ株の広がりも心配される。東京都では7月21日に1832人で、8月の第1週には1日の新規感染者数が2500人を超えるという試算もある。特に20代から40代で全体の約70%を占めており、これまでとは異なる状況だ。

 高齢者の感染減少は、ワクチン接種の効果だろう。全国で1回は30%、2回接種は18・72%。先行した65歳以上は1回が83・14%、2回は60・07%となっている。東京都では1回が全体で27・77%、2回が15・70%だが、65歳以上はそれぞれ81・25%、62・79%(いずれも7月20日時点、首相官邸調べ)だ。各自治体での接種のほか、東京や大阪では大規模接種や職域接種も行われて、数字としてまだ反映されていない人もおり、実際にはこれ以上にワクチン接種が進んでいる。

 政府は65歳以上の高齢者については7月末、全世代では10月から11月にかけて終了することを目指している。国民全体の60%が接種を終了すれば集団免疫を獲得するといわれており、楽観的に見れば、その11月にもその状況がやってくる。

緊急事態宣言解除がポイント

 1都3県は今年、緊急事態宣言とまん延防止重点措置の期間が続いているが、秋冬商戦にとってこれらの宣言解除がいつになるかがポイントになるだろう。

 8月22日に東京都での緊急事態宣言が解除になるかは不透明な状況が続いているが、この時点で解除されるにしても、延長またはまん延防止重点措置への移行になるにしても、新規感染者数は9月中旬から下旬にかけて下降し、状況は落ち着いていくと考えられる。

 東京が危機的状況を脱すれば、全国の空気感は一気に変わる。新規感染者数が減少していけば、これまで我慢し続けてきた消費者は、秋の行楽シーズンに向けて確実に動き出す。9月後半と10月の半ばには3連休がある。ここで一気に秋物需要が活発になる可能性がある。気象庁は3カ月予報で、「今年の夏は気温が高く、残暑が長引く」と発表した。8月末からは夏物と並行して初秋物、9月には秋物アウターなどを店頭に並べていく必要がある。

「跳ねる」可能性も今は準備の時

 横山町の問屋各社は「新型コロナの感染が収まらず、秋冬商戦の動向が見えてこない」という慎重な意見もあるが、ワクチン接種の進行と緊急事態宣言解除によって、「9月以降の

秋冬物は昨年とは違う状況になる」という声も聞かれる。中には「秋に一気に跳ねる可能性もあり得る」と期待を口にする問屋もある。

 問屋街が秋冬物一色になるのはお盆明けだが、すでに各問屋とも秋冬物商戦に動き出している。婦人服のアクロスやザ・センバ3、内藤商事リラレーヌ、ニューいちやま、都繊維ファッションシティ、子供服の東洋衣料は8月初旬から商品を投入する。例年よりも早めの展開だ。宮入はこの7月に「秋物予約会」を開催して、得意先との情報交換と仕入れについて打ち合わせした。

 各社は「今、この時期に秋冬物の仕入れ計画を立てることが必要」と口を揃える。今年もメーカーは生産を絞り込んでおり、直前になると仕入れたい商品がすでに欠品していることも考えられるという。8月早い時期に、万全の準備を整えたい。