横山町問屋街に秋物が出揃った。今年も昨年同様、メーカーの生産を絞り込み、問屋各社は小ロット・短サイクルの「売り切り」体制で商品を店頭に投入していく。新型コロナの感染拡大、それに伴う消費の低迷は続くが、問屋も、専門店も、商いを止めるわけにはいかない。新型コロナはいずれ鎮静化する。そこに備えた商品戦略が必要だ。

11月にかけて期待

 回復の兆しを見せていた経済は、新型コロナ・デルタ株の広がりによって一時停滞といった状況だ。

 デルタ株の蔓延以前は、多くの人は「9月の中旬以降には消費は回復を見せる」と考えていた。しかし、緊急事態宣言の発出地域が13都府県に広がり、政府は大型商業施設に入場制限を要請した。緊急事態宣言は9月12日まで設定されている。解除されるか否かは不透明だが、横山町の問屋各社は、今後もワクチン接種が進み、新型コロナが鎮静化に向かっていくことで「9月後半から11月にかけて衣料の上昇があるのではないか」と期待している。

 

秋物先行で来店促進

 百貨店や商業施設、専門店の夏物セールは不発に終わった。緊急事態宣言の発出、その地域の拡大、商業施設の入場制限で売り場は客数が見込めない。専門店の中にはいち早く、秋物を店頭に並べて先行受注会を開いたところもあった。

 8月中旬の数日、気温が下がった日が続いたが、横山町に仕入れに訪れたある専門店は「いずれ残暑はやってくるが、涼しさを実感したこの時期に秋物を店頭に並べる」と、積極的に問屋を回っていた。顧客に秋物をいち早く意識させることで、「その後の購買につなげていきたい」と考えている。専門店にはいち早い秋物シフトが求められている。

 一方、問屋はタイムリーに販売できる商品を小ロットで仕入れる。アクロス(写真)は「専門店の皆様に早く秋物を準備してもらいたい」と、この8月1日から秋物を店頭に並べた。本格化したのは盆明けだが、在庫を残さず、早いサイクルで商品を投入していく戦略だ。都繊維も「毎週、新商品が入荷する」とする。専門店は仕入れるべき時にピンポイントで商品を手当てしなければ本番に入って新鮮な商品を店頭に並べることができなくなる。今こそ、現物買いができる問屋街の力を利用する時だ。商品情報や入荷状況など、きめ細かく問屋とコミュニケーションを取っていくことが必要だ。

各社独自の商品入荷

 秋らしいカラーと軽やかさを感じさせる素材感がこの初秋物の特徴だ。「テンセルリバー素材で肌触り抜群のポロシャツ」(ニューいちやま)、「秋を感じさせるカラフルなブラウス」(ジェル村上)、「薄手の生地を使った切り替えチュニック」(アクロス)などがオススメだ。また、「シャリ感のある素材で、1枚で着られる」(都繊維)や「今年はプリントワンピースがトレンド」(ジェル村上)など、ワンピースにも注目だ。

 一方、羽織物を強化するのがザ・センバ3(レディースほりかわ)。「今年前半よりベストやカーディガンの要望が多い。この秋はそこに焦点を絞る」としている。シンプルなデザインのベストやどんなデザインにも合わせられるトッパーを投入する。

HPやSNSの活用を

 新型コロナによって東京に仕入れに来られない地方の専門店には、電話やファクスに加えて、もっと各社のHP(ホームページ)やLINEなどのSNSの活用を勧めたい。

 各社はHPの利便性を高めて商品情報を随時更新している。上田嘉一朗商店の「ウエダウェブ」、丹波屋の「お仕入れ.NET」、日東タオルのオンラインストアではネット上で商品を仕入れることができる。

 都繊維やアクロス、内藤商事リラレーヌなどは入荷した商品の写真などをLINEを使って送っている。これらのほか、各社の担当者が独自に取引先とのネットワークを作って発信しているケースもある。スマホからすぐにアクセスできて、旬な情報が手に入る。困難な時代だからこそ、チャレンジしていけば、新しい道が見えてくるはずだ。