コロナの新規感染が減少傾向にある中で、経済活動が活発化している。多くの人がマスクを着用しているものの、衣料販売は昨年実績を超えたショップが多い。7月からは「県民割」が拡大された通称「全国旅行支援」が始まる。物価の上昇など懸念材料はあるものの、人々の移動に伴って消費の拡大が期待される。

オケージョン需要回復へ

 観光庁は6月17日、新たな観光事業者の支援策として「全国旅行支援」を7月前半から始めると発表した。お盆期間を除いて、8月末までの実施を予定している。都道府県が行ってきた「県民割」は7月14日まで延長される。割引率は全国一律で40%、1泊あたりの上限額は交通付き旅行で8千円、宿泊だけの場合は5千円で、土産物店や飲食店で使えるクーポンも発行される。

 2020年の「G oToトラベル」を思い出してみよう。当時は新型コロナの新規感染が一段落したときで、多くの人が利用して観光地に出かけた。当時は多くの人が「潮目が変わった」と、消費が一時的に回復した。

 行動制限がほぼなくなった今年5月の連休は客数が伸び、19年の売上げには届かなかったが、前年を上回る数字を残した店舗もあった。外出や旅行、結婚式などのオケージョン需要が戻りつつある。今回はまさに夏物のラストスパート時期に合わせた旅行支援だ。一方で、海外からのインバウンド需要も次第に回復してくるだろう。東京などでは夏物バーゲンセールのスタート時期にあたり、衣料品の売上げ増加が期待されている。

懸念される物価上昇

 消費の拡大に水を差しているのが物価の上昇だ。総務省が発表した4月の消費者物価指数によれば、2020年を100として、生鮮食料品を除く総合指数は前年同月比で2・1%、食料全体で4・0%、生鮮食料品が12・2%の上昇となった。被服及び履物は前年同月比で0・8%、特に前月比では1・5%も上昇した。 ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギーや食料の供給停滞の一方で、進む円安傾向が大きく影響している。対ドルや対ユーロだけではなく、他の通貨に対しても円安が進行する「独歩安」といわれ、輸入品価格に大きな影響を与えている。小麦やガソリン価格の上昇、電気料金の値上げは家計を直撃している。長期化の様相もあり、この夏にかけても値上げの波はジワリと迫ってくるだろう。

秋商戦への備えを早期に

 ファッション衣料にも値上げ圧力がかかっている。横山町のある商社は「この数カ月でメーカーの値上げが急になった。この秋物から価格が一気に上昇していく気配」と話す。夏物は昨年秋から年初にかけての生産で、まだここまで原材料費や輸送コストは跳ね上がってはいなかった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻と円安の影響で3月頃から国内外のメーカーや縫製工場などが値上げに踏み切った。

 特に横山町の商社が注視しているのが定番品の値上げだ。「同じデザイン、同じ素材の定番品が2〜3割高になっている」という。もし、専門店の店頭で同じ商品が昨年よりも3割高になっていれば、顧客はその商品を買わないだろう。「付加価値を付けて、価格に見合う商品の価値をお客様に認めてもらうしかない」と、各商社はメーカーや産地を回って商品を探している。

 こうした状況の中で大事なのは、いち早く秋冬物の商品計画を立てていくことだ。夏物商品の消化に力を注ぐのと同時に秋物の展開アイテムや仕入れ量、そして価格ラインの設定などを事前に横山町の各商社と打ち合わせすることが重要だ。各商社とも既に秋冬物の商品調達計画を立てて、早い商社では8月に入るとすぐに初秋物を店頭に並べ始める。社会情勢がどのように変化して、私たちの商売にどんな影響を及ぼすのかを知ることは難しいが、早め早めの対策で秋物商戦に取り組みたいものだ。