5月18日に内閣府が発表した2022年1〜3月のGDP(国内総生産)の速報値は、前の3カ月と比べて2期ぶりのマイナスで、これが1年間続いた場合の年率換算でもマイナス成長と予測している。一方、12日に発表した「景気ウォッチャー調査」では、現状と先行きの数値がわずかだが改善している。このゴールデンウィークには多くの人が観光地を訪れた。今後の景気回復に期待したいところだ。

GDP消費支出は0・1%減

 1〜3月のGDP速報値によると、物価変動の影響を除いた実質成長率はマイナス0・2%で、年率換算でマイナス1・0%だった。オミクロン株による東京などでのまん延防止等特別措置が影響し、飲食や旅行などサービス需要が低迷し、公共事業が落ち込んだことが要因とされている。

 GDPの半分以上を占める家計最終消費支出(個人消費)は実質でマイナス0・1%(10〜12月は2・5%)。金額では1〜3月を年率換算すると292兆円。感染拡大直前とほぼ同じ水準だが、19年のピーク時には300兆円を超えていたことを考えれば、まだまだ消費は戻りきれていない。ロシアのウクライナ侵攻による食品などの原材料や原油高の高騰による値上げが家計を圧迫する状況が続く。消費の先行きの懸念材料になっている。

全国で景気上昇の気配

 景気ウォッチャー調査によると、4月は全国動向で現状判断DI(季節調整値)は前月差2・6ポイント上昇の50・4。先行き判断DIは家計関連で前月よりも0・9ポイント減少したが、企業や雇用関連で上昇し、トータルでは前月を0・2ポイント上回る50・3となった。内閣府では「コロナ禍での影響は残るものの持ち直しの動きがみられる。先行きは感染症の動向への懸念が和らぎ、持ち直しへの期待がある一方、ウクライナ情勢による影響も含め、コスト上昇等に対する懸念がみられる」としている。

 各地方の動向では、現状判断DIは全国12地域中9地域で上昇している。北海道2・1ポイント、東北4・7ポイント、関東2・7ポイント、東京都は6・6ポイントの上昇となった。先行き判断DIは12地域中8地域で上昇した。沖縄の7・1ポイント上昇が最も高く、北海道の4・8ポイントと続いた。東北は0・7ポイント上昇、関東は1・1ポイントの上昇だった。多くの地域で景気の回復を肌で感じている人が増え、先行きに対しても期待できると感じている。

肌で感じ、回復の糸口探る

 景気ウォッチャー調査の中で衣料関連に注目すると、徐々にではあるが消費者が動き始めているのがわかる。商売に対する感じ方はさまざまだが、特に前年まで全く動かなかった出張や会社の行事、結婚式などイベントなどが復活し、外出機会が増えていく中でコロナ禍の影響の減少を肌で感じている専門店もある。「県内の新規感染者は高止まりしているが、地元客が多くみられ、買上客数は前年よりもアップしている」(東北)、「前年では少なかった旅行用途の需要が増えた」(北関東)、「来店客数は前年比5%増。靴下や肌着などの実用衣料が売れている。外出着は高額品の動きが悪い」(南関東)、「4月に入り、ドレスが好調。今まで控えていた結婚式が回復基調」(東京)などの意見が出された。

 一方で、回復を実感できていない専門店があるのも事実だ。「感染者数が依然多く、人出が少なく、売上減」(東北)、「顧客は高齢者がほとんど。年金支給月でも客が来ない」(北関東)、「コロナ禍の影響やウクライナ情勢などで顧客のマインドが冷え込んでいる」(南関東)とする専門店もある。

夏商戦はこれからが本番

 こうした状況の中で、このGWは観光地に多くの人が訪れた。東京でも都心ばかりではなく、浅草やディズニーランドなどでも、この2年間にはなかった人の賑わいが見られた。GW明けからの天候の不順で人の動きは一段落といったところだが、6月の梅雨入り時期までの間は好天が予想されている。また、梅雨明けは例年7月の半ばだが、今年はそこから猛暑が予想されている。

 夏商戦はこれからが本番だ。問屋各社は夏物商品を充実させて専門店のニーズに応えていく。すでに夏物は出揃っているが、やはりここで懸念されているのはメーカーの生産絞り込みと海外商品の入荷遅れだ。問屋からは「売れ筋商品があっても追加できない。お取引先様の要望に十分に応えられないか心配している」という声が上がっている。一方で、価格の上昇も懸念されている。「夏物商材は何とか切り抜けていきたい」としているが、原材料や工賃の値上げで、徐々にだが値上げの状況が起きている。

 これからの時期、大事なのは店頭を訪れる客の動向と顧客のマインドをしっかりと見極めることだ。沈んだ気持ちのままで日常を過ごしたいと思う人はいない。少しでも楽しい気分で出かけたいと思うはずだ。そこにどうアプローチしていくか。専門店としてお客に貢献する道を探していくしか方法はない。