横山町で仕入れていただいている全国の小売店様、商品をご提供いただいているお取引先様、隣接の友好団体や関係諸官庁の皆様、そして横山町奉仕会加盟各社の皆様に、謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
旧年中は横山町奉仕会並びに会員商社に格別のご支援、ご愛顧を賜り、誠にありがとうございました。
世界を震撼させたウクライナ危機
日本が新型コロナの第6波の真っ只中だった昨年2月、ロシアはウクライナに侵攻しました。武力による侵攻が世界に大きな衝撃を与えました。欧米諸国と日本がロシアに経済制裁を課す中で、ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部を一方的に併合しました。欧米の支援を受けたウクライナの反攻に対して、プーチン大統領は核の使用も示唆するようになりました。世界の人々は戦争の恐ろしさと愚かさを改めて感じたのではないでしょうか。
この侵攻は世界経済にも大きな影響を与え、食料品やエネルギー、レアメタルなどの一次産品が高騰しました。天然ガスや原油などのエネルギーの価格上昇は、コロナ後の経済成長を目指した各国にとっては大きな負の力となりました。エネルギーをロシアに依存してきた欧州各国は、対ロシア制裁と共に新しいエネルギー政策に転換を迫られています。また、穀倉地帯であるロシアとウクライナの食糧輸出の縮小によって世界の食糧事情の悪化が深刻化しました。輸出減は原料価格の上昇につながり、世界各国はその対処に苦慮しています。一国の軍事侵攻が世界の人々の生活を脅かしています。
一方、日本経済もウクライナ危機の影響を大きく受けています。私たちの暮らしを圧迫しています。原油価格の上昇によってガソリン価格が高騰。一時は170円台となりましたが、政府の価格抑制政策によって現在は150円台後半になりました。小麦などの原料高によって、昨年の半ばから食料品価格の値上げが相次いでいます。年が明けてからもさらに企業は値上げを発表しています。横山町で流通業に携わる企業、そして小売業の皆様にとっては物流費の値上げや商品の値上げが直撃しました。果たして以前のような生活に戻ることができるのか。1日も早い戦争終結とウクライナの人々が平和な暮らしを取り戻すことを祈っています。
ウィズコロナの日常生活に 横山町での仕入れに来街される専門店様にも厳しい1年でした。国内の衣料品メーカーは、コロナ禍の中で生産量を絞り込み、売れ筋商品の追加が難しい状況でした。中国産衣料は中国の「ゼロコロナ」政策の中で商品の生産が滞り、また原材料価格の上昇によって商品価格が上がるという状況になりました。さらに「独歩安」といわれる円安が追い討ちをかけました。日米の金利差は広がる一方で、22年1月に1ドル=115円台だった為替は、10月には一時、150台まで円安が進行しました。これは食糧やエネルギーにとどまらず、衣料や日用品にまで大きな影響を与えました。しかし、為替については政府の介入もあり、昨年末には130円台と落ち着いてきました。これからは次第に安定してくるのではないかと思います。
私たちの暮らしは、約3年に及ぶコロナ禍を通して、まさに「ウィズコロナ」が現実になってきました。昨年末には第8波の到来といわれていましたが、「全国旅行支援」が実施され、飲食やイベントなども人数制限が解除されて、外出する機会が増えてきました。新型コロナの第5類への変更も検討されています。これからはコロナと共存した日常生活になっていきます。ウィズコロナに合わせたビジネスのやり方を考えていく必要があるでしょう。
新しい街へ、グッドデザイン賞受賞
横山町で仕入れていただいている専門店様に感謝の気持ちを込めて、4月から61日間にわたって「奉仕会創立90周年売出し」を実施しました。そして11月、12月の「記念売出し抽選会」には1年間、奉仕会加盟各社に仕入れに来ていただいた多くの皆様が訪れました。「特等10万円旅行券」や「1等舞浜エリア一流ホテルお食事会ペアご招待」を引かれた皆様には改めてお祝いを申し上げます。また、今年は皆様の仕入れがよりお得になるようにと、「問屋街みんなdeクーポン」を発行しました。
横山町奉仕会はこれから創立100周年に向けて、新たな10年の始まりです。加盟各社はこのコロナ禍で1社も欠けることなく、頑張って営業を続けてきました。強い結束の下、互いに励まし合いながら、常にお客様である専門店の皆様のことを考えてきました。この強い結びつきこそ、100年に向けた大きな力になると信じています。
そして今、街の姿が変わりつつあります。加盟商社の建物が老朽化し、また耐震構造のない建物の新築工事が次々に始まっています。商社によっては、将来を見据えて建て替えを行い、長期の視野に立って、来年、再来年に新たな店舗でのスタートを目指す心強い状況も見られます。完成後は、皆様が仕入れをしやすいフロア構成と品揃えをご提供できることでしょう。
一方で、横山町馬喰町街づくり会社とUR都市機構、エンジョイワークスがこれからの問屋街の姿を模索し、空きビルを活用して意欲のある起業家を招致する「日本橋横山町・馬喰町エリア参画プログラム」では、第1号事案がスタートしました。横山町大通りの「YYパーク」の隣接地に設置した「プラス・ロビー」では街で働く人やクリエイターが交流して、新しい問屋街を目指す活発な議論が交わされています。こうした取り組みが評価され、2022年度の「グッドデザイン賞」を受賞しました。私たちが規定した街のデザインコードに則った取り組みによって新しい街の姿をお見せすることができるでしょう。
幅広いニーズに応える問屋街に
奉仕会に加盟していることは「信頼できる問屋である」ことの証しです。まずは仕入れていただく専門店様に安心して仕入れていただける環境を整えていくことが私たちの使命です。横山町は330年の歴史を持つ商業街です。商売をする店は時代に合わせて、人に合わせて柔軟に扱う商品を変え、商売のやり方を進化させてきました。消費者は今、何を求めているのか。そのためにどんな商品が必要なのか。専門店の皆様に今の空気感を伝え、売れる商品を仕入れていただく。それが問屋の生きる道であり、奉仕会がそのバックアップをしていく。奉仕会の果たす役割は、今後も大きくなっていくと考えています。
昨年8月には韓国・ソウルで随一のアパレル施設「新平和市場」を訪れて、代表者と面会しました。コロナ後にも横山町問屋街への安定的な商品供給を約束していただき、将来に向けた友好関係を確立しました。
専門店の店頭を訪れるお客様のニーズは多様化しています。衣料だけではなく、それを取り巻く服飾雑貨、シューズ、生活用品など、ライフスタイルを提案する店舗が人気を集めています。私たち問屋街単独では専門店の皆様のご要望に応え切るのが難しいかもしれません。でも、問屋街の近隣には浅草や合羽橋といった靴や生活用品の問屋街が存在しています。横山町奉仕会が中心となり、問屋街同士の横の連携を強化していく。関係を深めていく。それがこれからの皆様の大きな力になっていくと考えています。
力を合わせて、荒波に立ち向かう
私たちはコロナ禍の3年間を乗り切ってきました。苦しい時も消費者の皆様のため、専門店の皆様のために踏ん張ってきました。専門店の皆様のおかげと感謝しております。
これからも皆様のご商売に貢献するために、私たち問屋自身が強くなっていかなければなりません。問屋街活性化委員会(三上明夫会長)は経営基盤を強化していくための勉強会や優れた経営者に学ぶ機会を設けていきます。3月には事業承継をテーマに、小松ばね工業(東京都大田区)の小松万希子社長をお招きします。また、経営と街おこしを学ぶ金沢市(石川県)への視察旅行を計画しています。多くの成功事例に学び、個々の問屋がより強く、そして魅力ある街づくりに取り組んでいきたいと考えています。
私たちを取り巻く社会、技術は想像を超えるスピードで進化しています。先端を走ることはできなくても、社会の変化を理解し、ITによるDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入、インターネットやSNSを活用した取引の拡充、yhカードの利用者拡大、ICタグの導入など、1社ではできない課題に対して加盟各社が一つの力となって取り組んでいきたいと考えています。そして皆様のサポートに全力で取り組んでいきたいと思っています。厳しい時代です。難しい時代です。奉仕会は専門店の皆様と力を合わせて、その荒波に立ち向かっていきたいと考えています。